社内で新しいサービスをリリースする際、個別にサービスの契約を結んでいては多くの時間と労力が必要になります。そのため利用規約というものを作り、利用者がこれに同意することでサービスを提供できるように用意する必要があります。今回は利用規約の作成の際に注意するポイントについて解説していきますので、お悩みの方はぜひ参考にしてください。
規定、規程、規則との違い
利用規約を作成する前に、「規約」について言葉の意味を整理しておきましょう。似たような言葉に規定、規程、規則がありますが、それぞれ違った意味を持っています。
規定とは、物事をある一定の規則(フォーマット)に定めること、および定めたものをいいます。また、同じ読み方をする規程ですが、これはいくつかの規定を体系的にまとめたものです。
次に規則について説明します。規則とは行為や手続きの際の標準として定められた事柄という意味を持つ言葉です。規程が規定を含むように、規則の中にいくつかの規程と多くの規定を含むことがあります。
最後は規約です。利用規約ではなく「規約」という場合、団体・組織の中で協議して決めた規則や原則になります。利用規約、サービス規約といった場合にはサービスを提供する事業者とサービスを受ける側の利用者の間には、同意を条件とすることで成り立ちます。
利用規約の作成
ここでは利用規約の作成について説明していきます。新しく事業を企画してサービスの提供を始めようとした場合には、利用規約が必要になります。
利用規約とは
利用規約は、法律上必ずしも必要なものではありません。利用規約が必要になるのは、サービスを受ける利用者が大量にいて、個々に契約を結ぶことが困難な場合です。事業者と利用者の間でトラブルが発生してしまった際、迅速に解決するために利用規約が必要となります。
サービスの対象がニッチで限定的な場合や、利用料が高額で利用者の数が少ない場合には、個別に条件を詰めながら利用に関する契約を結べばそれで済むでしょう。しかし利用者が多い場合には、利用規約を事業者側で作成し、それに利用者が同意をすることでトラブルを防ぐことができるようになります。
事業者が利用規約に求めるものとは
利用規約があれば、トラブルが起きた際に利用者とそれをもとに話し合うことができます。規約を作るうえで必要なポイントは以下の通りです。
- 不適切な利用者を自社の判断で利用停止させられる規約
- 不適切なコメントを自社判断で削除できる規約
- 個人情報の管理体制
- 利用者に納得してもらえるもの
- 関係する法律や権利の整理
利用規約を作る際には、ネットで似たようなサービスを探しその利用規約をもとにして自社サービスに適用するように修正する方も多いです。しかし、いざトラブルとなったときに大きな賠償問題などにならないためにも、法的に漏れのない自社のサービスにフィットした利用規約を作るようにしましょう。
利用規約の作成時に知っておきたい法令
利用規約を作成する際には、下記の法令が関係していることが多くなっています。
- 個人情報保護法
- 特定商取引法
- 消費者契約法
- 著作権法
- 資金決済法
サービスやビジネスモデル、マネタイズの方法によってはほかの法律が関係することもあります。利用規約を作成するときには、上記の法律を十分理解したうえで自社サービスと照らし合わせていき、不備のないように利用規約を作成していきます。
また、法律が改正された場合には、利用規約の該当部分および関連事項を随時修正・変更していかなければなりません。自社で対応が難しい場合には、法律の専門家に相談できる体制を整えておくと良いでしょう。
利用規約の主な内容
利用規約には、下記の内容を盛り込んでいきます。ここではあくまで一般的なものを説明していきます。
利用規約への同意
「サービスを利用するには利用規約への同意が必要です」の記述を入れます。同意に関する文がないと利用規約は法的効力が認められません。
用語の定義、サービス内容の定義
サービスに関する用語の定義が決められていないと、トラブルの際に解釈を巡って水掛け論になってしまいます。同様に、サービスの提供する範囲、提供しない範囲をしっかりと明示します。
利用規約の変更
サービス内容は随時変化していくものです。そのため利用規約の変更方法について、民法第548条を参考に規定しておきます。
権利の帰属
提供するサービスに含まれる著作物の著作権について規定します。特にユーザーの持つコンテンツを提供してサービスが成り立つようなUGCタイプの場合には、著作権および著作物の利用権について慎重に検討して規定します。
禁止事項、アカウントの停止
利用者による誹謗中傷、法令に違反する行為の禁止事項を定めておきます。また利用規約を違反したユーザーや反社会的勢力に対して事業者がユーザーアカウントを停止することができることを明示します。
サービスの停止・終了、損害賠償
サービスの利用状況を見てサービスを停止、または終了する可能性があることを記しておきます。そして、サービスの利用に起因する利用者の損害賠償の免責に関することも定めておきましょう。
裁判管轄
事業者と利用者の間でトラブルが発生した場合の裁判所を決めておきます。
料金の支払い方法
そのほか、有料サービスを提供する場合にそのサービス内容と支払い方法を明示しておきましょう。また、利用者の個人情報保護などプライバシーについて利用者への配慮も必要です。
まとめ
利用規約を作る際、他社のサービスの利用規約を参考にして作成しているケースが多いです。しかし、利用規約は事業と事業者を守るためでもあるので、漏れがないように注意する必要があります。利用規約を作成するにあたって悩んでしまう場合には、信頼できる弁護士に相談してみましょう。
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