企業を運営していくためには、就業規約を作成したり、取引先との契約書を作成したりするなど、その企業のニーズに合った法的な業務やサポートが必要となります。企業法務とは、企業や個人事業主の経営活動に関わる法的な業務のサポートを行う仕事です。
一般的に企業と継続的に契約を交わした顧問弁護士がその業務に携わりますが、今回はそんな企業法務の内容について詳しく解説していきます。
企業法務とは
企業法務とは、企業が経営を成り立たせ活動していく際に起こりうる法的な業務を、処理およびサポートする仕事のことを指します。さまざまなビジネスがある中で、その企業によって企業法務のニーズも異なるのです。
企業法務に携わる者は一般的にその企業と継続的に契約した顧問弁護士がその任務にあたります。経営者およびその企業の法務を担当する者は、継続契約した顧問弁護士からサポートやアドバイスを受けて企業の運営に対応します。契約書をはじめとする法務文書の作成のほか、企業活動におけるトラブルの回避や処理、企業の発展につながる資金調達や情報収集などが顧問弁護士の主な仕事です。
企業法務とはただ単に法的な専門知識を必要とする仕事ではありません。企業法務は企業活動における法的なリスクを回避することも重要な点ですが、そのためにはその企業のビジネスの十分な理解を必要とし、内外の情報を把握したうえで法的な知識の活用を顧問弁護士に求めます。
企業法務を必要とするビジネスのカテゴリーは広く、そしてそのビジネスが必要とする企業法務もまた広範囲の内容です。そのため、企業法務に携わる顧問弁護士はビジネスのニーズに沿う法規制や判例の知識を常にアップデートする必要を求められます。
企業法務の内容について
企業法務の内容はビジネスによってさまざまですが、一般的に下記の業務が企業法務の内容として挙げられます。
- 契約書などの作成や締結
- 法律に関わるトラブルの回避や予防に対するサポートやアドバイス
- 交渉支援
- 株主総会や取締役会を実施
- 企業コンプライアンスなどの統制
いずれも専門性が高いものとなっているため、下記に詳しく解説していきましょう。
契約書などの作成やチェックなど法務文書の管理
クライアントと取り交わす契約書の作成やチェックなどの文書管理を行います。契約を交わした後に起こるトラブルの回避や解決策は契約書に沿って判断されるため、トラブルが発生したときに法的に不利になるような条件はないか、きちんと文書管理をしてチェックすることも重要な企業法務の仕事です。なお、主な書類の種類は以下の通りです。
- 契約書
- 定款
- 議事録
- 許可証
- 登録証
- 就業規約書
法的トラブルの回避や予防
企業活動ではクライアントとのトラブル以外に、以下のような企業内トラブルも多く発生します。
- 業務中の怪我
- 個人情報の流出
- 交通事故
- 長時間労働
- 社内のパワハラやセクハラ
法的な観点からトラブルの回避および予防、そして解決する仕事も企業法務の内容です。
経営政策や戦略のアドバイス
経営者の相談に応じるのも企業法務に含まれます。しかし正しくアドバイスするためには、最初に解説したようにその企業のビジネスを十分に理解する必要があります。
- 法的な不備が合った際の対応
- 競合他社にはない独自の戦略立案
- 具体的な資金調達の方法
これらのほかにも、企業のニーズに合わせて随時情報収集を行っていきます。常に変化する市場の動きを把握して、迅速に判断して経営政策や戦略についてアドバイスや経営陣をサポートします。
企業コンプライアンスの強化を図る
企業内の内規など基本的なルールの強化を図ることも企業法務の内容の1つです。企業活動の中では社会的な規則がたくさんあり、もし従業員が規則を破るとその企業の社会的な信用が失われることになってしまいます。粉飾決済や情報漏洩など、企業内の不祥事を厳しく取り締まる必要があるのです。
また、従業員に責任感を持たせて、仕事に関する意識の向上を図ることも重要です。職場の秩序の維持と確保を目的として、企業コンプライアンスを守っていきましょう。
売掛金などの債権の回収
売掛金などの債権回収も業務内容に含まれます。たとえば不動産会社の場合、遅延している家賃収入の回収や、家賃未払いにつき部屋の撤去を求めるような仕事もします。仮に債務者が債務に応じず担保権がない場合は、資産を差し押さえて民事訴訟などの手続きをしたうえで、債権の回収にあたっていくのです。
海外進出など事業拡大の法的手続きなど
企業が海外進出を図る場合は、その法的手続きを行います。この場合進出先の海外の法律も把握し、法律違反を起こすことがないよう、一定レベルの語学力が顧問弁護士に求められる場合もあります。
企業法務を担う弁護士の選び方
さまざまな企業活動があり、必要とする企業法務の内容も多岐にわたります。顧問弁護士を選ぶ際は、下記のようなポイントを押さえて継続的な契約を結ぶとよいでしょう。
コミュニケーションの取り方が上手であること
企業法務を担う弁護士は、いろいろな人間と協力したり交渉したりしなければなりません。クライアントのみならず、企業内においても従業員が気持ちよく労働に励めるような心配りが必要な場面もあります。また、複雑な問題であっても、わかりやすい説明であれば話し合いもスムーズに進めていくことができるでしょう。
情報力と法的な分析力があること
企業法務を担う弁護士は、常に新しい情報を集めて、事実を的確に把握することが求められます。そのうえで法的知識にもとづいて分析し、判断する必要があるのです。情報を常にアップデートすることは企業法務を担う弁護士の基本であり、それらは迅速な回答と対応に反映されます。
交渉力があること
企業法務を担う弁護士は、企業内で作成する契約書や規約書について、経営者やそれに関わる従業員によりわかりやすく内容を説明するコミュニケーション能力のほかに、指導していくリーダーシップ的な能力も求められます。それと同時に、対面では企業を代表してさまざまな交渉を行う仕事も任されます。交渉力に欠けると余計なリスクを背負うことになったり、大きなトラブルに発展したりしてしまう場合があるため、企業法務を担う弁護士には交渉力が必須ともいえるでしょう。
まとめ
企業の活動でその経営の法的な支えとなる企業法務の内容は、企業のビジネス内容によってそのニーズもさまざまです。企業法務を担う弁護士は、企業と継続契約を交わした顧問弁護士たる者がその任務を担っていきますが、ただ単に法律の知識があるだけでは企業法務の仕事は担えません。交渉力や判断能力、コミュニケーション能力など、トラブルの解決に必要な力を持っている弁護士に依頼するようにしましょう。
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